「誰でも、一生の内に必ずこの答えを見つけなくてはならない」
上記は4章貧しき友でのおじさんノートで、コペル君へ問い掛けた質問について、おじさんの考えを載せています。
この章は主役コペル君の友達で、豆腐屋の息子の浦川君が学校に来なくなったので様子を見に浦川君の家に寄ったエピソードです。
この際、庶民より裕福な生活をしていたコペル君が、庶民(それでも自営業)の浦川君の家で見たことにより裕福と貧乏の違いを感じました。その日、おじさんと浦川君の家で見たことを話し、そこからおじさんノートに展開されていきます。
おじさんノートより
①浦川君の尊敬せずにはいられない優しい性質と、コペル君の貧乏に対して侮る心がなかったことを高く評価。大人になってもその心を忘れるな。
②実は浦川君よりもさらに貧乏な人はいる。彼らは労力一つを頼りにし、働けなくなれば餓死に迫られる。更に、体を壊したら一番困る人が一番体を壊しやすい境遇で生きている。
③世の中の人が生きていくために必要なものはどれ一つとして人間の労働の産物でないものはない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。生産する人と消費する人という区別を決して見落とさないように。
④君は毎日の生活に必要な品物から考えると消費ばかりして何一つ生産してない。しかし、自分では気がつかないうちに他の点で、ある大きなものを日々生み出している。それは一体何だろう?
これらは経済・社会問題としての現代人にもあてはまる話だと思われます。
そして④の問い掛けについて、コペル君は中学生なので消費の専門家になること自体は構わないと述べています。つまり、物質的な事を問いてはいない。また、一生の内で答えを見つけるということは、子供~大人~老人~死までに答えを見つけるということ。これは一体なにか?
ちなみに、本の最後にコペル君はこの問いかけに、コペル君自身の答えを出しています。
その答えも頷けるものではあるのですが、どうも自分にはその答えがしっくり感じない。
そういう意味で、おじさんはこうも言っています。
「(答えを)人から聞いたって、君がなるほどと思えるかはどうかわかりはしないんだ。自分自身で見つける事、それが肝心だ。」
この本を初めて知ったのは池上彰氏のTV番組が最初だったと思います。その際に紹介されたのは漫画版の方でしたが、実際に読み始めるきっかけになったのはやっぱり、YouTuberさんがおすすめしていたからです。また、漫画版ではエピソードが削られているそうで、小説版の方が良いとのことでした。
原作が書かれたのは今から約80年前の1937年、昭和の激動期で盧溝橋事件の頃だそう。戦争に向けての思想や戦前教育の中での人生の問いかけ本となります。
今や戦前&戦後の人間へ長く問いかけ続ける作品ですね。
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