「ノブレスオブリージュ ⇒ 東のエデンからの、まさかの伏線回収へ?」
今回紹介するのは、「史上最強の哲学入門」という本です。
著者は飲茶さん・・・名前に凄く惹かれますね!(サイバイマンが鬼門・・・)
結論から言うと、
「すごく面白い!・哲学ってすごい!・引き込まれるし、心が震える!」
大学で哲学の授業を受講したことがありますが、講義内容がさっぱりすぎて頭に残らなかったんですよね。
その点この本は、各ラウンド=章のテーマ(人間世界の何故?を分野別に分けている)に沿って、年代や出身国が違う哲学者が登場し、考え方の変遷を追って解説・紹介されているので読みやすく、分野毎にまとめられているので、非常にわかりやすいです。
また、冒頭で著者は、漫画「グラップラー刃牙」をイメージして構成しているせいか、ページをめくる度に、
「この哲学者の言ってることすごい!、これこそ真理だ!」
と、思った矢先に次の哲学者がその真理をぶち壊しにやってくる!
感情移入しやすい読者(私?)とすれば、今さっき、この哲学者は人生の先生だと思った矢先、確実にその先生はぶっ飛ばされてしまうので、何ともいえない自分の浅はかさ(?)に悲しくなる一冊です。
そんな中で、本当は第1ラウンド「真理の真理とは?」の感想を書こうとしたのですが、どうも伏線を回収してしまった感があったので、第2ラウンドの感想を書いていこうと思います。
第2ラウンド「国家の真理」の流れ:
古代ギリシア:プラトンのイデア論(真の国家とは?、哲人王思想)
古代ギリシア:アリストテレスの論理学と三つの政治体制(政治体制の変遷を予見)
17世紀イギリス:ホッブズの社会契約説とリヴァイアサン(性悪説、民衆の自由の制限、絶対王政)
18世紀フランス:ルソーの社会契約論と人民主権(絶対王政の終焉)
18世紀イギリス:アダム・スミスの神の見えざる手(市場主義による国家の最適化)
19世紀ドイツ:マルクスの共産主義(資本主義VS共産主義、結果は資本主義の大勝)
21世紀日本:新自由主義 (規制緩和による市場主義回帰、労働価値の低下とニートの台頭)
プラトンとアリストテレスについては、別で記事にしたいことがあるので省きます。
ただ、アリストテレスは国家について、君主制・貴族制・民主制の3つの分類と、それぞれの最悪のケースを論じ、政治が腐敗したなら革命により政治体制の交代が行われる事を紀元前4世紀(2,500年前)に予見していたという・・・これってすごいことだと思う。
古代ギリシアは現代同様に民主制にて政治を行っていたわけですが、アリストテレスの言う、民主制の最悪のケースである衆愚政治により衰退、時代はローマの王政(帝政)へと変遷していきました。
しかし、王とは言えども、さらに強い権威(神・協会・法王)がある時代です。世界史的に言えば神聖ローマ帝国のカノッサの屈辱などがそうでしょう。
神と宗教が強かった時代も、免罪符やルネサンス・宗教改革・宗教戦争などで権威が傾き、そしてホッブズは人間同士の共食いを防ぐため、民衆の自由を制限し、その安全保障システムとしての覇者:リヴァイアサンを望みました。こうして絶対王政時代へと流れていきます。
その後、絶対王政下で特権階級が贅沢三昧、民衆は搾取される構造が続いた頃のフランスにて、ルソーは、王や貴族等の特権階級は集めた税金を適切に運用し、民衆に幸福を提供する義務がある。(ノブレスオブリージュ)、真の権力者は王ではなく民衆だと人民主権を叫ぶ。こうして、フランス革命以降、民主制へ移行していきます。
民主制へ移る頃、産業革命により経済は発展し、民衆は豊かさを求めるためにどうするかを考えます。そこでアダム・スミスは利益の追求により生じる競争により、市場原理の神の見えざる手により公共の利益が発生、社会は最適化されると考えた。(資本主義の台頭)
かくして、資本主義を採用した国は成長を続けていったのだが、これに疑問をぶつけた哲学者マルクスが現れた。彼は、労働者は資本家に搾取されているし、そして、資本家は資本家同士で競争しており、そのシワ寄せも労働者へとつながっているとした。そうして、最後に虐げられた労働者が団結して資本家を倒し、革命を起こして資本主義の終焉をもたらし、その後共産主義化するとした。
・・・まあ現在、共産主義はそもそも破綻しているわけなのだけども、その理由もこの本に簡単ではありますが載ってますね。
共産主義は失敗したが、それでも資本主義の問題は解消されていないのが現状です。さらに、長く続いた資本主義の下、経済の発展と共にモノに満ち溢れた時代を謳歌する自分たちですが、それでもモノを作り続けなければいけない時代でもあります。
「何故新しい物を作り続けなければならないのか?、それでも働かなければならないのは何故か?」
著者は、資本主義社会は常に成長し続けなければいけない(新しい物を作り続けなければいけない)過酷な運命を持つとしています。その為に労働しなければいけない。つまりは、資本主義を継続するために必死にモノを作り続けないといけないとしています。
そんな中、「今あるもので充分だ、苦労してまで欲しい物がない、経済的成功に対する欲望がない」=「働いたら負け」と考える人種が現れた・・・ニートだ。
労働の価値を見失ったという歴史的な問題に直面した世代である自分たちの役目は、労働の価値をどう見直すかということ。それは、資本主義の次のステップに繋がる主義(哲学)を考えることとなる。
著者は言う、その役割を果たす可能性が高い者がいる。それは、
「前時代の主義により生み出された歴史的渦中にいる人。過重労働や、労働に生き甲斐を見いだせず、体や心を壊してしまった人やワーキングプア、負け組、ニート」だと・・・
アニメ:東のエデンの最終話で、主人公:滝沢がニートたちについて、こう言っています。
「あいつらは直列に繋いでやれば結構なポテンシャルを発揮するんだ。きっと、迂闊な月曜日の時のようにスッゲェー奇跡を思いつく!」
・・・やばい、話がつながった・・・
なお、この本は西洋の哲学者のみの登場となり、東洋の哲学者については別の本が出ています。
・・・ええ、もちろん買いますよ?
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